私は、我ながらに思うが、昔のくだらないことをたくさん覚えている。
みんなが成長するにあたり、外付けHDDに保存するような記憶を脳内のデスクトップに保存している。
そのため、昔からの友達にその記憶を披露すると、そんなことあったねー!よくそんなこと覚えてんねー!とゲラゲラ笑われる。
先日話題になったのが、私の中学1年生の時の担任の先生だ。
見た目は華奢だが、気の強そうな当時はアラサーの女性だった。
その担任の先生は音楽の先生だった。いつもピアノを弾く前に喧嘩するかのごとく、細くて長い指なのに、ボキボキ指を鳴らしてからピアノを弾いていた。
しかも、喋りも福岡の筑豊訛りな為、スタンダードな喋り方がすでに喧嘩腰であった。
そんな先生が私の担任だった。
ある日、学校の授業の一環で、両親の仕事を調べて、紙に書いて発表するという授業があった。
私の親は自営業だった為、親に聞いたことをそのまま紙にそれらしくまとめて提出した。
その授業の最後に、その担任が何故、自分が教職を目指したのかを語り出した。
先生は音大出身で、就職の際に最初にピアノの先生をするか検討したらしい。
しかし、ピアノの先生は給料が低く、こんな給料でやってられっかと思い、ボーナスもある公務員を選んだそうだ。
ちなみに、やってられっかと、本当にその時の語りで言っていた。
しかも、先生自体は、筑豊訛りで淡々と、ボーナスがあるので公務員になりたかった、と少し、クラスにウケるのを狙ったように、笑みを見せながら喋っていたが、クラスは静まりかえっていた。
傍から見ると、ちびまる子ちゃんのシーンとなった場面を見ているようだった。
学校の先生がボーナスの事を生徒の前で言うなんて…。そんな雰囲気が流れていた。
そんな授業があった数週間後に三者面談が行われた。
母が学校に来て、私も同席した上で面談となった。
担任はその先生なので、無論、その先生と3人で面談が行われる。
先生は、面談が始まると、お子さんは家で学校の話をしますか?と母に尋ねた。
鋭い。
私はあまり、学校の友達のことや、学校での出来事を家であまり喋っていなかった。
母は私の学校での話をあまり楽しそうに聞かなかったし、興味がなさそうだった。それに、私の友達のことをあまり良く言わなかったからだ。
母は何と答えるのだろう。
言ってないもんな。
そうすると、母はすぐに口を開き、こう言い放った。
先生が学校の先生になった経緯の話を聞きました!ボーナスがあるから公務員選んだんですよね!
まさかのトークチョイスである。
先生はまさか、自分が話したボーナスがあるから教職を選んだ話をされると思ってはおらず、一度、チラッと私の顔を見てきた。
私は、そんな先生の顔など見れるはずもなく、斜め下の一点を見つめ、母の話が早く終わることを祈った。
何故、この場で、このトークをチョイスしたのか。
確かに、この話だけは家でした。
でも、この場でよりにもよってこの話。
母は、空気が読めない。もしくは、本当にこの話しか私から聞いた記憶がなかったのかもしれない。
先生も苦笑いしながら、ああ、そうですか。と言って、面談は終わった。
コメント