しばらくすると、祖父は、もうそろそろ死ぬ気がするので病院に入院したいと言い出した。
老人会の人などの話を聞いていて、自宅で亡くなると警察を呼んだりして大変と聞いたらしく、病院で死にたいと言い出したのだ。
母はとりあえず、かかりつけの病院に連れて行って相談した。
もう、祖父は、毎日がきつい。
もう、頑張りたくない。
と言い出した。
医者は、一旦大きい病院で診てもらいましょうと言い、紹介状を書いてくれた。
母は母の弟に相談した。
母の弟は自宅にいた方がいいのでは?と言った。慣れ親しんだ自宅で亡くなるのが一番だろうと言い出したのだ。
しかし、これ以上衰弱してくると、母はもう仕事の両立は難しくなる。
それは、祖父も分かってきていたのかもしれない。
母の弟には大きい病院に連れて行く日に来てもらった。どちらにせよ、紹介状を書いてもらっているので病院には行かねばならない。
しかし、自ら病院で死にたいので入院したいと言い出したくせに、祖父は、もう、しんどくて外に出たくないから、医者に言って、死亡診断書を書いてもらってこいと言い出した。
無論、そんなことできるはずがない。
そんなことが罷り通れば、あちこちで何かしらのの詐欺が横行する。
それはできない事を兄弟揃って伝えるが、本人も行きたくの一点張り。
死亡診断書の日付の部分だけ空けて、死んだらそこに日付を書いてもらえばいいだろ!と言い出した。
物分かりがいいのか悪いのか。
自ら病院死ぬと言い出したのは何だったのか。
なんとか、祖父を言いくるめたが、次は、もう祖父はぐったりしきっていて、母と母の弟では車まで運べなかった為、しょうがなく、救急車を呼び、紹介状をもらっていた病院へ行くととなった。
母も母の弟も本人が死期が近いという申告を間に受けていたのだが、その大きな病院で、リハビリをする為、靴を持ってくるよう病院から言われた。
母が、あれ?回復してんの?と不思議がっていた。
ベッドから起き上がるのも無理と言っていたのに。
しかし、祖父はもう、しんどいのでリハビリはしたくないと言い出した。
すると、その大きな病院は、基本的に、治療を目的としている為、改善を望まないのであれば緩和ケアがある病院に転院してもらうようにと言われた。
その大きな病院は、原付バイクで15分~20分の距離なのだが、緩和ケアのある病院は原付バイクで30~40分かかる。
それに、緩和ケアの病院は土地勘があまりない場所なので道もスムーズに行けない。
母は車の運転はできるが、原付バイクの運転の方が得意なので、大きな病院には原付で通っていた。
しかし、緩和ケアのある病院に通うとなると結構な負担である。
今の、大きな病院にも、おむつを届けるために2~3日に1度は病院に行っていた。
それが、緩和ケアのある病院に通うとなると、負担がすごい。
雨なんか降ったら最悪だ。
母はその当時からずっとパートをしている。
パートと今の介護だけでも大変なのに、そこに緩和ケアの病院に通うというのも追加されるとすごく大変だ。
母の弟と妹は入院中の祖父に頑張って生きてよ!と言うが、今までの床屋に連れて行ったり、歯医者に連れて行ったりなどはしていないし、おむつを届けているのもずっと母がしていた。
今までに大きな病院で検査があると言う時も、弟の方は来たが、妹の方は来ていない。
結局、面倒をみるのは母なのである。
母は、弟、妹が帰って、2人っきりになった祖父に、コソッと
もう、頑張らなくていいからね。
と声をかけたらしい。
祖父はその時には記憶が混濁しており、昔あった心配事を、あれは、大丈夫かな?と言い出し、母がそれはもう終わったから大丈夫よ、と声をかけていた。
もう、記憶もあやふやになってる。と母が言っていた。
母と母の弟は葬式の相談をしに近所の葬儀屋に祖父が入院している間に相談に行った。
コロナ禍ということもあり、少人数での式で相談し、100万くらいのプランで見積もりを取ってもらっていた。
母の声かけが届いたのか。
緩和ケアの病院に行く前日に祖父は亡くなった。
母の介護も終わったのだ。
しかし、まだ、母の苦労は続く。
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